Case #49 - 硬くなった人形と柔らかい手


アナベルは深い悲しみのうちにいた。彼女は木でできた硬い腕のある人形を持って来ていた。「これは私なの」そう言い、彼女は「私の腕はゾンビのように硬直していて、私の心は沈んでいるの」と付け加えた。 彼女は子供のころ、両親がいつもひどい喧嘩をしていて、そのことにより彼女の心は硬くなってしまい、心に恐れが残ってしまったことをうちあけた。大人になると自分がきつい人間であると感じ、もっと女性らしくやわらかい人間になりたいと思ったが、この人形のように「硬い」ままだった。 私が彼女の言葉に深く耳を傾けていくうちに、だんだん彼女の心情が理解できてきた。彼女は確かに、深い悲しみの中にいたのだ。 同時に私の中でおかしな、それも少し冷笑的とも言える考えがうかんだ。それはゾンビがアニメか何かで出てくる様に面白おかしく歩き回っているものだった。 なので私は彼女との深い心のつながりがあること、そして彼女のことをとても気にかけていることを話し、その後に自分の脳裏にうかんだおかしなゾンビのことを話した。私は彼女に嫌な思いをさせたくなかったが、このこともシェアしておきたかった。 彼女は快く耳を傾けてくれた。私は二人でゾンビになってみようか、と提案した。そこで、私たちは立って、二人で並びながら一緒にゾンビのように歩き回った。グループの皆に向かって歩きはじめたら、多くの人はこのおかしな様に笑っていたが、ある人達は怖がっていたので、その人達は回避してあるいた。それでもこの体験は皆にとっておかしく愉快なものであった。 アナベルがすわり、私も彼女を面して向かい側にすわり、彼女がこの体験を通してどう感じたかを観察してみた。 この体験は彼女の心をやわらかくし、彼女の心を開いてくれたようだった。彼女は自分の人形の腕を触りながらどんなにかそれが硬いかを言っていた。。。でも、腕をよくなでてあげたらそれが柔らかくなっていくかもしれない、ということも。 そこで私は彼女からヒントを得、彼女の腕を手にとり、柔らかくなでてあげた。彼女は小さい子供が誰かにすがるように、私の腕を両手でつかみとった。彼女がこの体験をどう感じているか見たところ、彼女がだんだんとおだやかになっていくのが目に見えた。私は彼女の腕をこすり続けながら、自分の心をやわらげ、おだやかになることについて話した。彼女の手からは強いエネルギーを感じ取った。彼女は自分の腕がだいぶやわらいだ、と言ったので、今度は私が手のひらを上にして両手をひざにおき、彼女にわたしの手をなでるように言った。彼女が私の手を何度もこすっている際に、私は彼女の手から強いエネルギーを感じ取ることを伝えた。彼女は自分の心と気持ちに心から向き合うことができ、その過程をあゆんでいる最中もどのような心の変化が起きたかを教えてくれた。 「あなたの手は私の両親をそれぞれ示しているの。離れているけど、二人とも存在している」と彼女はいった。彼女はそれぞれの手に愛をもって触れ、また悲しみのある目でみつめた。そして人形をとり、人形の顔をわたしの指一本一本に触れさせた。また人形の両腕をとり、片方は私の左手に、もう片方は私の右手につけた。 彼女は「私の両親はそれぞれ別々に生きているけど、私はどちらとも繋がっている事ができる」と言った。 これは彼女が大きな変化を遂げた瞬間だった。彼女の悲しみは意気消沈して行き詰まったものから、心が開き、なだらかなものへと変わっていった。彼女の硬かった腕は今はリラックスしていて、彼女の体の様々な部分は息をし、今現在に存在していて、外の世界とつながっていた。 これは彼女にも、私にとっても、とても重要な体験であり、この体験をしてから彼女は深い平安と心のなかの一致を感じることができた。



 投稿者  Steve Vinay Gunther