Case #46 - ウジ虫の悪夢


フェリシティは最近見る悪夢について話した。ゲシュタルト法では通常、夢の開示はしないが、大体の悪夢は自分の中の攻撃性を示している。夢というものは、それを見ている人の性格と関連していると考えると、悪夢というものは自分の中の攻撃性を示していることになる フェリシティは、それぞれ場面は違ったが、何度も同じような悪夢を繰り返し見ていた。大体はこういう夢だった。 彼女は地下室にいて蛆(うじ)を生育していた。蛆は何百匹、何千匹といた。そして、次のシーンでは彼女は蛆を吐いていた。彼女の体は蛆でいっぱいで、ただ一匹を残し全て吐いていた。 さて、この夢を聞く限り、一日中過ごせるほど様々な解釈があるであろう。一番簡単な解釈だと、地下室は心の底にあるものを示していて、蛆はその人の中にある何か「腐った」ものを示している、と言えるであろう。 しかし、ゲシュタルト法ではここまで深く探らない。ただ、その人の体験をそのまま受け取り、その体験がその人にとってどのような意味を示しているかを分かることができるよう、探っていくのである。 私はフェリシティにそれぞれのシーンで出てくる蛆に対してどう感じるかを話すよう促した。彼女は蛆である自分は太っていて、なまけもので、何も出来ない自分を示していると言った。 そして、彼女の体の中に残っていた一匹の蛆は外に出てきたいのだ、ということも言った。 次に私たちは蛆になったつもりで、歩き回った。 私は、「みんなそれぞれ自分の心の中に、他の人に見せたく無い『蛆』がいるのだよ」と彼女に伝えた。 私は具体的な例を挙げて、自分の中にいる蛆について彼女に話した。 このように取り扱いが非常に難しい問題は、セラピストがリードしてあげることが大切だ。 彼女は初めは自分の中にそのような「蛆」が住んでいることを認めたくなかった。彼女はあひる口をして、しょげた顔をしてみた。彼女の表情はまるで、自分は何も隠していない純粋な少女よ、という表情だったので、私はその表情をそっくり返してみせた。そして、「それは心に『蛆』がいる人が見せる表情では無いですよ」と言った。私がこう言ったことにより、彼女は自分が心の問題を認めていないことを自覚しはじめ、自分に正直になることの大切さを感じはじめた。彼女は自分の「蛆」についていくつか例をあげたので、私はそれらが彼女にとってどれほど辛いものであるか、共感を示した。しかし彼女はまた先ほどの「私は何も悪いことはしてません」という顔をしたので、私は今の表情は、彼女がさきほど打ち明けてくれたことを卑下している、と言った。 こうすることにより、私は彼女が自分の問題と直面することを促すことができた。ゲシュタルト法は、いつも「今、私は誰なのか」という『現在』にフォーカスしている。 私はグループの中にいる他の人にも自分の中の「蛆」について話してもらう様お願いしたので、フェリシティは心の闇を持っているのは自分だけでは無いということを理解することができた。また、こうすることにより、皆が自分の心の奥底を打ち明け、お互いの仲が深まり、楽しくセラピーをすることができた。



 投稿者  Steve Vinay Gunther